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2015年11月18日 (水)

カビは日射が好き・・・その④ まとめ

とても長いブログになりました。興味ない方はスルー願います。

Dscf9318事務所の氏神様・・・槻田神社の築4年の手水舎。

カビは日射が好き・・・その③で「緑の家」のオーナー様から貴重なご意見と指摘を頂きました。有りがとうございます。確かに読み返して見ると私自身が混同しすこし乱暴に表現してしまったのでここにまとめとしてもう一度記載します。

コラムにも掲載する予定で作成したので今回は「です、ます。」ではありません。

今から少し前、
常日頃私が疑問に思っていたことに一つに・・・

なぜ雨が直接当たらない木にカビが生えるのか?

・・・

雨が当たる木にはカビが生える事は一般的な現象として理解できるが、雨が直接当たらないところまでカビが直ぐに生える事が大変不思議だった。

Dscf9320上の手水舎の屋根裏を見あげる。

Dscf9323そのアップ。水玉模様の水染みは・・・多分、手水の水掛遊びのようだ。

Dscf9321更にアップ。雨がまず付かないであろう部分の天井にカビがしっかり生える。

 

室内の木部(無塗装の床、柱等)にカビが生える事は殆ど経験が無かったこともある。まあ例外的に大変古い家にはえているのは見たことがある(これは文科省のHPでなぜかは理解できたので機会があれば)。

風通しよく暮らしている家なら、内外の相対湿度はほぼ同じく推移するだろうし、また絶対湿度を見ると室内の方が高い事が多くなっている。つまり普通に考えるとカビは室内の方が生えやすいはず・・・。これについての疑問は少し解けた。それは家の中でも温度差があり、日が当たりやすい南側を中心にした空間は空気温が上がるので、相対湿度の変化があり、気温が上がりやすい日中は湿度が低めである。カビは相対湿度が80%以上が続くと短時間で発芽しカビ菌糸を増殖し胞子を多数生むが、湿度6080%の期間があると発芽と生長は遅くなる。よって一日で1/3は相対湿度が低くなる可能性が高い南側中心の空間ではカビが生えにくい。

一方北側の押し入れ等を中心にした空間は南側気温の影響を受けることが少ないので梅雨時は常時80%以上になりカビが短時間で発芽し生長する事ができる。

 

さてここで、屋外の雨が殆ど当たらない場所(屋根の裏=軒裏)などは、屋根にあたる日射によって温度も上がりやすく、相対湿度の変化もあり且つ風通しもよく、家の北側の押し入れより確実にカビが生える条件では無いのにカビが直ぐに生え増殖する。これは一体どういう原因であるのか。

 

その答えが・・・紫外線であった・・・と今のところそう考えている。

 

Ceis26_2251

その考えを固めることが出来たのは先に紹介した論文、紫外線量の実調査である。

私達の目には直接紫外線を感じる事ができないので、軒裏や北側の直接日射のないところまで紫外線が当たっていると感じる事がない。それは水平面における直接の日射が大きいので、そのところに目がいってしまい、日陰でも紫外線がしっかり当たる事を認識できない。

Ceis26_22542この家(ある条件)では・・・北側の紫外線量が東側より3倍もある。

 

5671魚眼レンズで天空率を可視化するとこのようになる。住宅地と駅前広場の天空率の比は1:1.2とわずかな差。

 

Ceis26_22543駅前広場は理論通りの東午前中大、西午後大、南正午大の紫外線量となる。
 

この論文の中で、絶対的な紫外線量の把握は簡易測定器では難しいようなことが書かれているが、相対的な量に大きな問題が無ければ傾向を見るのには有用なはずである。

 

その傾向を説明すると、

駅前と一般的な住宅の天空率写真はそんなに変わらないのに(天空率の比率で1:1.2)、西、東紫外線量は駅前の方が2倍も多い時間があり、東に至っては10倍、一方南は殆ど変わりない。このように紫外線は天空率だけでは無くその周囲に紫外線を反射・吸収しやすい物が有れば相当変わる事がわかる。細かく見ると今回の住宅地では北側でも条件によっては東側と比べ平均で3倍もの紫外線量となっており、北でも紫外線は弱くないことがわかる。例えば公園の木で囲まれた場所での紫外線量はなんと1/1001/50にしかならない。

Ceis26_22544縦軸のスケールが他の部分の約1/100と二桁ちがうところに注目。

Ceis26_22551林の中は紫外線の反射が届かない。葉っぱなどが吸収するのだろう。

上のように天空率を表現する写真で見ても全く光の差し込まない密林のジャングルと言うより、普通の都市にある少し緑の多い公園の木の下という感じである。つまり紫外線の反射や吸収、透過は可視光線とは少しちがう。可視光が反射光(散乱光)の占める割合が1から2割に対し、紫外線において正午付近では6割が反射光(散乱光)である。普段見なれている可視光線を基準に考える概念は、意識して捨てなければ紫外線は「見えない」のである。例えば・・・太陽高度は夏の方が相当高い(=紫外線は大気透過が少なくなるので強い)にも関わらず、冬にスキーをすると、真夏に泳ぐより日焼けが激しいときがある。これも雪の紫外線反射率が海面の反射率より相当たかいためである。青色よりも波長が短いので当たり前の話である。

56782気象庁HPから抜粋。反射率は大きく違う。

57実は散乱光(反射光を含む)の方が影響があり2/3を占める。ここが可視光と全く異なる。 気象庁HPから抜粋

56曇りでも紫外線の影響は高く、周囲の反射率に大きく影響される事が予想される。

 

よって最初に説明した氏神様の手水舎では、雨の影響が無くとも周囲が開けた環境で、水面もある事から、屋根裏まで紫外線は確実に多量届いている可能性が高い。よって屋根温が上がり相対湿度が低いカビ繁殖には都合が悪いときがあっても、カビが生えやすい木地に変わった事が考えられる。

 

ここで整理してみる。

無塗装の木の色の変化は3つの要素がある。

A 一つ目は雨によって水溶成分が流される事で起きる変化(脱色)

B 二つ目は紫外線による色素(や防かび物質※)の化学変化(退色)

C 三つ目はカビなどの汚染物による汚れ(加色)

※・・・これが今回の仮定で「カビは日射が好き」の部分であり直接色の変化には関係ないが、カビの生えやすい環境の因子と思われるのでカッコ書きでいれた。

 

これらは別々に起きる現象であればその変化がよくわかるのだが、屋外にあってはAとBと少し遅れるがCが同時に起こるので、どの要因で木の色が大きく変化したかがわかり難い。そこでわかりやすい例が上のつくばい舎の屋根裏である。この部分にはA(脱色)がなく、Cが起きている。一般的に室内と木と状況が大きく違うのが紫外線量であると考えるとつじつまがあう。

槻田神社の社屋で観察すると・・・

Dscf9300 左が北西になり手前が南西。この建物は西の雨がかりの部分でシルバーグレー化が顕著に進む。但し矢印部分は白色変化がないがカビが多数。

Dscf9333上の矢印部分のアップ。埃に見えるがカビである。

 

Dscf93132北東面の外壁の様子。カビも生えているが南西に比べシルバーグレー色化は遅い。多分脱色(雨当り)と退色が少ないせい。

Dscf9301南西側の外壁の色の様子。

Dscf9301_2屋根の形と同じくならない黒色部分。これが日射か雨なのか・・・青い矢印の水染みを見る限りでは右の方に雨跡が激しい。

屋外の木で最初に色が変わる原因は雨水による脱色である。これは間違いない。雨水によって水溶性の物質が流失し色が変わる。室内床でも同じで水を溢すと脱色する部分があり、これは「水染み」と呼ばれる色が白くなる現象。

Dscf9270紫外線の退色より雨水の脱色の方が早い(築2年の外壁)。

次に紫外線であるが、紫外線の化学変化より雨水の変化が大きいので実感が少なく、その紫外線劣化と同時にカビの汚染が始まる。しかし汚染と言っても腐朽菌と違い木を著しいスピードで劣化させる事はなく、ある一定のバランスで進行するが、一般的には水がかり多いところから広がるようである。

Dscf9326手水舎の雨がかり柱の色とカビ。

Dscf9325_2雨がかかり難い手水舎屋根裏近くのカビ。よく見るとカビのグレーが茶色のの木地に混じっている。つまりカビは全面に生えている。

上の二枚の写真は、同じ手水舎の雨が頻繁にかかる北面の柱(杉)のアップと、雨が殆どかからない屋根下の梁(杉)のアップ。よく見るとカビの量はそんなに変わりないのに、柱の方が雨で脱色しているのでグレーが強く見える。実際は両方ともカビが似たように生えている。

Dscf9317北側の欄干および床

Dscf9315米ヒバの床はホワイトグレーではあるが 目立ったカビ斑点はなく苔が優勢。

こちらの写真は北東面の手摺付近で一番多く雨が多くかかる部分(水が溜まっている)である。このように日射の弱いところは「苔」がカビと同居するか、カビに対し苔が優勢になり黒い斑点が少ない。つまりその水分環境に一番適した生物が「主」となる事がわかる。

また北東面は雨がかりで無いところは脱色はなくカビも少ないように見える。

雨がかかるところはそれだけで木材は脱色し白色化しする。また雨があたる=紫外線も強くあたることが普通で、同時に紫外線退色も起こり、カビが生えやすい環境になるので一般的にみると、雨がかりからシルバーグレー化する事になると考えられる。  

さて、今回の題名は「カビは日射が好き」であり、カビは日射が嫌いと一般的に語られる事への強い反論を込めた題名である。カビがただ単に雨水だけの影響を受けるなら初期の水溶性物質を流したあとに直ぐに生えるはず。

 

逆で考えるなら水があたらない場所ではカビが生える事は少ないとなるが、実際は雨がまず当たらなそうな屋根の下にも、大きく変わりない量で生えているところが見受けられる。つまり雨がかかりも無くまだ水溶性色素が残っている場所でもカビが生えているところも多い。そんな所を目撃するとカビが木に生える原因は水の他にあるだろう推察すことになった。

Dsc043032ここから始まった・・・。カビと日射(紫外線)。

この2年間意識して木とカビをみると、

製材された木は天然皮がないので簾のように防かび物質がはっきりと表われることはないが、紫外線があたりにくい場合は、素材の持つ防かび成分でカビの発生と増殖が遅れる。

カビは大気中から直接水分を得る事ができないので、付着した木から水分を得るのだが、これは水を被った状態でなくともよい。空気の相対湿度85%以上あれば、その環境下の木の平均含水率は上がり、20%を超える辺りからカビは水分補給可能と言われる。よって新潟県の夏環境であれば紫外線で防かび成分が少なくなった部分には、雨があたらなくとも容易にカビが生える事になる。

 

以前からお話している外壁のシルバーグレー色とは、雨や紫外線によって当初の黄色成分に変化が起き、白色化したところに黒色のカビが生えているので、グレー色に見えるのである。まだ黄色成分が残っていても防かび成分が弱まればカビが増殖しやすくなる・・・と考えている。一方で雨がよく当たる場所は初期のカビ数は多くなる事も確認されている。機会があれば・・・紫外線量をしっかり測定し裏付けしたいし、論文にしたい・・・衝動がある。

日射で防かび物質が破壊されるとカビが生える・・・天然素材に生えるカビは日射が好き!

 

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