2010年 建築学会 9月9日から富山県で 注目は暑’’だから通風
家はどんな性能の家であれ、人が住んでいればその人発熱、家電、日射で必ず外気より高い室温となります。ですので、それを外気温に近づけるように窓を開けて通風(換気とは言いません それは換気は汚れた空気を入れ換えることが目的で冷やすことが目的ではありません 冷やす行為は通風といいます)を行います。
ではその通風をどのくらい取ると外気に近づくのでしょうか?それをシミュレーションし、研究した論文がありますのでご紹介します。
上の表は新潟大学の赤林研究室(赤林伸一教授)がこの大会で発表する論文中にある図です(北陸支部大会では発表済み)。
この論文によると、
前回(昨年)の研究において外気と同じくするための通風は、
最小換気回数(家容積に対する換気量の割合)が
20回/時以上
となることがわかった(1時間で家の空気が20回入替わる事)。
そこで今年は
各都市に建つ一戸建て住宅において
建ぺい率50%で立ち並ぶ分譲地
の家で外気と同じ気温にする、つまり
20回/時になるための窓の大きさはどのくらいか?
という研究です。
※外気と同じ室温の定義は0.7度以内の差、またこのシミュレーションは内部発熱を含みません。との事です
すると上図のとおり新潟市では窓の(開口部)大きさは床面積に対し29%の開口部がないと外気温と同じくならないそうです。29%という数値は驚きではっきり言って無理に近い大きさです。
床面積100m2(30坪)総2階建てであれば、2階床面積は50m2・・・29%の開口部(引き違いだけであれば倍面積)29m2必要とのことですが、普通の引き違い窓の大きさが1.6m×1.3m=2.08m2
29m2/2.08m2=14個
・・・絶対無理です・・・。窓だけの家になり耐震性がとれません。
とうことは、住宅が混み合う市街地の分譲住宅では通風よる暑さ緩和は理論上不可能です。田舎のように建ぺい率が10%くらいなら29→15%になるので窓個数が7個。これであれば実現可能ですが、建ぺい率10%とは床面積30坪総2階建て造る時の土地の大きさが500m2(150坪)必要と言うことです。1階も通風を考えると更に厳しい条件で30坪の家で200坪の敷地が必要です。これは自分の土地だけでなく周りの家もその状況が必須なので日本の普通の都市ではありえません。
風には揺らぎがありますので、ある瞬間は20回/時の通風が取れる時や、その風に直接当ることの快適感もありますが、平均すると外気より数度室温が高くなるということが科学的に証明された事になります。やっぱり都市住宅で頼りになるのはエアコンですね(笑)。
お気づきだと思いますが、当事務所の「緑の家」は通風性能(風通し)がよいから冷房があまり必要無いと一度も申したことがありまません。経験的に無理とわかっているからです。だから通風で大丈夫といった勧め方はしません。しかし自然派推進住宅系のメーカーには、通風を考えました。といって勧めるところも多いですね。大丈夫なのでしょうか?確かに2方向窓をとると建築条件によっては、心地よい風が真夏でも得られる事がありますが、これはラッキーと思った方が良いでしょう。家の周りの建物が変わった時に急に風が入らなくなることもあります。
この論文は9月10日(金)12時頃、富山大学五福キャンパス 人間発達科学部332講義室で発表されます。何時も赤林先生の研究室論文発表は満員になります(議論の白熱で予想外の乱闘があり面白いから)のでお早めに入室された方が良いと思います。入場料は8000円です。他のおもしろい論文も沢山ありこの金額は安いでしょう。他の論文もこのブログでご紹介します。
さて大会の詳しい内容は
http://news-sv.aij.or.jp/taikai/2010/registration.html
です。折角お隣の富山県なので車で一日だけでも行って見ましょう。4日間行われます。
このような一戸建て住宅の通風性能を研究した論文は初めてではないでしょうか?通風はあまりにもファクタ-が多すぎて今まではこのような全国の通風評価できる研究は皆無でした。設計者にとっても引いては建て主にとっても素晴らしい研究です。
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